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bizair
2023年09月26日
インターネットを個人のスマホや会社の端末で業務に使用する際、無線通信を可能にする技術の1つにWiFiがあります。
WiFiは介護施設や老人ホームでも導入の波が広がっており、介護分野でのWiFiの重要性は高まっています。
そこで、介護施設・老人ホームにWiFiを設置する必要性やメリット、それに伴うICT化の課題について解説します。
目次
介護施設・老人ホームの中には、施設各所にルーター機器を設置して、施設内でWiFiを利用できるようにします。
そもそもWiFiとは、インターネット環境を構築する際に無線LANで電波をつなげて、手元の端末や機器と通信ができるようにした技術・仕組みのことです。
例えば、自宅に無線LANの機器を置いて、有線のインターネットに接続し、スマホでWEBサイトの閲覧やメール・チャットアプリを使うことができます。
スマホと接続を可能にしているのが「ルーター」です。ルーターは有線からの中継機の役割を果たします。ルーターがあれば1つのAP(アクセスポイント)から複数の端末にインターネットをつなげられます。
そして、企業では、業務のためにWiFiを導入し、タブレット端末やデバイスを使用するなど、社内でインターネット環境を作っているのです。
その上で、飲食店やホテル、公共施設の一部では、業務用の他に一般向けのフリーWiFiも同時に提供しています。
介護施設・老人ホームでは、業務用だけでなく、一般向けのWiFiも提供する施設があります。オフィス業務のWiFi利用よりも現場で活用できる場面が多いためです。飲食店やホテルと似ているのは、施設利用者がそのままWiFiを使うためです。詳しくは次の見出しで解説します。
昨今、WiFiの導入が急がれているのは、利便性の向上やネットの普及に限らず、介護業務へのICT化や入居者向けの対策が背景にあります。以下に、業務用のWiFiが必要になる理由について解説します。
介護現場では、最新の技術を活用して、さまざまな業務環境を改善する工夫がされています。特に介護業務のICT化によって、「介護記録の簡易化」や「見守りシステムの導入」が可能です。
もちろん、ICTという言葉を聞き慣れていない読者の方も中にはいるでしょう。ICT化は、“Information and Communication Technology”のイニシャルを取った「情報通信技術によるコミュニケーション」を意味します。
介護業務のICT化により、以下のことを可能にします。
介護度の違いで業務負担の異なる介護施設・老人ホームですが、多かれ少なかれ業務には共通した部分があります。そこで、ICT化を実施して、介護業務の負担を軽くするのです。
介護業務のICT化を実現するためには、介護施設・老人ホームの施設内にWiFi設備のAP(アクセスポイント)を設置して、ネット環境を構築することが必要です。
業務を主な目的にしているICT化に加えて、入居者向けのサービス向上でもWiFiの導入が積極的に行われています。近年は高齢者の方でもインターネット環境を使ってパソコンやスマホを操作する時代です。
以前はネット環境を構築している介護施設は少なかったこともあり、不便な環境を改善するため、導入する施設が増加しています。特に医療介護に特化した施設よりも介護度の低い有料老人ホームでは、WiFiを優先して設置していることです。
理由としては、施設にネット環境のないケースがいまだに多く、他の施設と差別化できるためです。
以上のように、ネット環境をあえて電話通信やチャットに活用できる場面も増えています。
施設に預ける家族にとっては、本人からの連絡を頻繁にすることが可能です。決して民間の有料老人ホームだけの取り組みではなく、公的施設の代表格である特別養護老人ホームでもWiFiの導入が積極的に推進されています。
上記のことからもWiFiの必要性の高さは明白でしょう。
一概に介護施設・老人ホームといっても、介護サービスを提供する施設にはさまざまなタイプや規模があります。
まず、公的な施設と民間の施設では、運営母体が異なります。介護施設として有名な「特別養護老人ホーム」は公的施設です。他にも公的施設は、以下が挙げられます。
一方で、民間施設は以下です。
WiFiは公的施設・民間施設のどちらでも普及が始まっています。
介護施設・老人ホームがWiFiを導入活用するメリットについて、以下に3つ取り上げます。
まず、WiFiでネット環境が使えるようになると、従業員の働きやすさが向上します。なぜなら、WiFiはコミュニケーションを取れるアプリ・システムを個々の端末で利用できるため、従業員同士のコミュニケーションが取りやすくなるからです。
施設には多くの職員や入居者がいて、通常はコミュニケーションは顔を合わせて会話をする必要があります。しかし、ネット環境で業務連絡や個々の会話をデバイスでネットを介して行えるのです。そのため、広い施設でも動き回らずに必要な報告や相談が可能です。
もちろん、スマホでネットを使える職場(フリーを解放の場合)は、休憩時間や業務外の時間でスマホやパソコンを使用しやすくなるのも施設側は労働のインセンティブにできます。
2つ目のメリットは、WiFi導入によるICT化で業務を効率化できることです。
介護現場では、2020年に流行が始まった新型コロナウイルスの対応の影響で人手不足が重なり、現場の負担が増えていました。上記を解消するために、WiFiの設置に取り組む施設は急激に数を増やしています。
具体的な効率化のできる業務は次の3つです。
例えば、介護記録の電子化では、紙の書類を減らして電子化し、アセスメント表や計画表、サービス提供記録などの作成や保管をソフトを通じて行います。情報共有もしやすくなり、書類を作成する時間を減らせるのです。
また、見守りシステムは、ベッドサイドシステムによる早期対応や介護の自己を防ぐ安全確保の役割としても使えます。
その上で、医療施設やリハビリテーション、入居施設など複数の施設、他の地域に分散する施設と情報共有する際にも便利です。
介護施設・老人ホームの業務用WiFiの導入はICT化と直結しています。そのため、補助金が出るメリットがあります。
補助金によって費用負担を軽減できるため、最小限の予算で最新ICT化のついでにWiFiを設置できます。
2023年現在で使える補助金は、「ICT導入支援事業費補助金」です。申請することでWiFiルーターや必要機器の経費が補助金から出ます。
など
ただし、見守りシステムの導入時にWiFi設置する場合は、「介護ロボット導入支援事業」での申請が必要です。
業務用とは別に、入居者がWiFiを使えるようにすることで、有料老人ホームは人を集めやすくなるというメリットがあります。
インターネットを活用した情報社会が当たり前となったいまでは、年齢に関係なく、スマホやパソコンでネット通信を利用します。
そのため、介護施設・老人ホームの選定時に「WiFiのある施設環境」を重視しているのです。そこで施設側は、入居者のニーズを把握し、快適な生活環境を提供する一環として導入することで、入居を希望する人を全国から集めやすくします。
介護施設・老人ホームにWiFiを設置するメリットがある反面、設置前後には課題もあります。
WiFiは設置場所に気をつける必要があります。電波の到達状況や機器の性能に応じて機器の個数や設置箇所を決めるなどです。
例えば、障害物のある場所に強い周波数に対応しているルーターであれば、複雑な構造や部屋が連続している場所にも設置することができます。
また、5部屋前後をまとめて接続できるルーター性能がある場合は、図面などからベッドサイドの範囲をカバーするように、設置に適した場所を探します。
ただし、WiFiは電波である以上、心電図やペースメーカー、RFID(バーコードタグを読み取り電波で記録する自動認識技術)との干渉が起こることがあります。そのため、医療機器との電波干渉を避ける対策を施すことです。
具体的な対策には以下が挙げられます。
ICT化を目的としたWiFi導入では、設置した後に課題が発生します。従業員はスマホや普段使う機器の使い方はわかっても、最新のICT機器を操作・管理するノウハウや経験はなく、施設に導入した後で初めて使うことになるケースが多いためです。
単純な使い方を覚えるまでの慣れは、研修の繰り返しと使い続けることで解決できます。しかし、個人によって使える範囲や理解度が大きく変わるため、差が出やすいことです。
その上で、ICT機器のトラブル・問題の解決には、機器を理解し操作に精通する人材の確保が必要です。しかし、人材をすぐに見つけるのは難しいといえます。
WiFiの導入はたしかに業務効率の改善などメリットがありますが、ICT化にすぐ対応できるわけでないという意識が必要です。
WiFiは個人が自宅で使用する場合、そこまで大きなセキュリティリスクは発生しません。しかし、施設内で業務に使用する場合、WiFiはセキュリティへの対策に気をつける必要があります。
具体的には業務で使用したデータを外部から盗み見られたり、不正アクセスを受けたり、WiFiに接続するデバイスや記録装置を介してウイルスに感染したりすることです。
不正アクセスは機器の脆弱性をつかれるケースが多く、ウイルス感染や外部から盗み見られる場合はネットワーク制限を上手くできていないことで起こりやすくなります。
安易にUSBメモリやSDカードで自宅のパソコンに使用したものを施設でも使用するなどして感染する場合もよくあります。
また、通信の暗号強度もセキュリティに大きく関わってきます。有名なのは「WEP」や「WPA」「WPA2」「WPA3」の4つの方式です。
4つの暗号化方式には「RC4」「TKIP」「AES」などが使われており、セキュリティ強度の高い「AES」(「WPA2」や「WPA3」)以上を使用することが望ましいのです。
特に重要な対策として、施設利用者と業務のWiFi通信を区別することです。WiFiは通信のセキュリティを高めていても、ID・パスワードの使い回しや流出で不正な利用を受けやすくなります。
施設内の通信の中でも業務と入居者使用で分離することで施設内業務に使用したデータを不正なアクセスで外部流出するのをできるだけ防ぎます。
介護施設・老人ホームにおいて介護システムや見守りシステム(ロボット)を導入する場合に、補助金の対象となります。
しかし、既存の通信環境(古いWiFi)の交換工事まで補助する制度ではなく、補助金申請期間も限られています。都道府県によっては今年度の補助金申請期間が終了しているケースもあるのです。
何より、補助する金額は事業所の人数によって上限額が決まっており、対象項目ならいくらでも補助金が出るわけではありません。
特に、WiFiの設置工事の中でも古い機器を交換しての設備リニューアルは、設置費として補助が出ません。しかし、最新のICT機器を導入するためには欠かせないものです。
また、セキュリティ対策や保守、研修はWiFiでも重要な位置づけで、補助は出なくても安全確保のために費用をかけても実施したいところでしょう。
今回は、介護施設・老人ホームのWiFiについて、業務用と入居者向けの2つの側面から導入時のメリットや課題について解説しました。
基本的に、介護業務でWiFi環境を整えることは、業務のICT化を見据えています。補助金でルーターなどの設備を整えられるのも魅力です。
しかし、ICT化には課題も多く、WiFiをただ設置するだけでなく、上手く活用できるように施設内の体制や従業員のマインドを変えることも視野に入れましょう。以上を踏まえて、WiFiの導入を検討しましょう。