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bizair
2023年09月26日
ホテルには無料でWiFiが利用できるところが数多く存在し、自社でもホテル事業でWiFiを設置すべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、ホテル施設に設置するとなれば、入念な準備とWiFiを導入するための業者選び、工事期間などが必要になってきます。
そこで、ホテルにWiFiが必要な理由や導入の際に押さえたいポイントを解説します。
目次
WiFiの設備は、インターネットを外出先でも使いたい宿泊客のために必要です。
未設置の場合に「ホテルでもWiFiの導入を検討して欲しい」という宿泊客の声が聞こえてくることもあります。
しかし、WiFiへのニーズが高まっているのか、ピンとこないホテル関係者の方もいるかもしれません。
そこで、いまWiFiが求められている理由について説明します。
ホテルは顧客体験が重視されるサービス宿泊業です。利用者が魅力的に感じる設備やサービスが求められています。
なかでも、ホテルにあることで満足度が高まる設備としてWiFiがあります。アンケート調査ではエアコンの次に重視されており、ホテルにWiFiがあって当たり前な時代に突入したことが背景にあります。
ビジネスや観光で気軽にスマホのネット環境が使えることが生活の一部になっているからです。
一般的に、スマホは通常のモバイル通信と有線のWiFi接続を行う2種類の利用方法があります。ホテルに宿泊客用のWiFiがない場合、以下の2つの手段で代替する必要があり、利用者にとっては何かと不便です。
ホテルにWiFiがあれば、個人の通信手段に頼らず、宿泊客の複数台接続が可能となります。特に無制限のプランに入っていないモバイル通信しか手段のない人にとっては、ホテルが用意するWiFiが必要不可欠です。
日本でホテルを利用するのは、国内からの旅行客だけでなく、海外からの訪日外国人もいて、人数の規模は年々増えています。
日本が取り組むインバウンド対策には、ホテルの対応としてさまざまな環境整備が求められており、その中の1つがWiFi環境の構築です。
外国人観光客にとって、ホテルの客室やラウンジでインターネットを利用できることが、ホテル選びの重要なファクターとなっています。
なぜなら、日本は海外に比べてWiFiの導入が若干遅れており、ホテルや駅で使えることが当たり前と思っている外国人観光客が多いからです。
外国人が日本でネットを繋ぐ理由としては、調べ物や母国との家族や友人と連絡を取ることが主な目的です。
スマホでも連絡は取れそうですが、海外でスマホやプリペイドSIMを使用することは料金や通信制限などの問題があります。データ量を節約するには、無料のWiFiが使えることです。
したがって、海外からの集客が利益に直結するホテル事業者は、インバウンドの訪日外国人に宿泊先として選ばれるためにWiFiをホテル内に設置するケースが増えているのです。
ホテル宿泊は、観光や旅行で利用する人ばかりではありません。ビジネスで利用する人も当然ながらいます。
例えば、ビジネスではメールやビデオ会議、資料のアップロードなど、インターネットを使用する機会も多いでしょう。
しかし、業務の通信量は、個人に比べてもデータ量が大きくなりやすく、スマホや個人契約のモバイルWiFiは適さないのです。
上記のビジネス客に対して、ホテル側のサービスで無料or有料オプションのインターネット環境をホテル内のWiFiサービスで提供することにより、宿泊先としての価値を高められるのです。
家庭用のWiFiと比較して、ホテルに設置するWiFiは複数接続を前提としたホテル向けのルーター(周波数帯域)を採用することが基本です。そこで、ホテル側が知っておきたいWiFiの前知識を以下に3つ取り上げます。
まずホテル向けに採用されているWiFiは、小型の端末がよく使われています。ホテル用ルーターのことを「ホテルルーター」もしくは「トラベルルーター」と呼びます。
よく家庭用で使われている(ルーターの線がごちゃごちゃした)数台の端末が並ぶ光景とは異なり、シンプルに1端末のサイズは小さく、等間隔で設置されます。
ホテルのWi-Fiには、「WiFi6」や「WiFi4」といった規格の表示があります。数字が大きいほど最新のWiFiを示しており、WiFi6は2019年に登場した最新の「IEEE 802.11ax」無線LAN規格です。
ちなみに、WiFi4以前は数字を付けて呼ばれておらず、4の付くWiFi4~WiFi6が高速通信のできる規格として知られています。
最新のWiFi6は消費電力を押さえるため、ホテル側も経費の節約になります。また、同時複数台との接続が容易なため、一人客ではない場合でも快適な通信環境を提供できるのがメリットです。
障害物のある場所での接続に弱かったWiFi5と比べても快適で、2.4GHz・5GHzの帯域両方に対応しています。
WiFiには5GHzと2.4GHzがあります。両方に対応していることにどんなメリットがあるのか、通信技術にあまり詳しくないとわからないものです。
実は、周波数帯域の両対応は、障害物の多い場所で接続する場合の有利・不利、通信速度の高低に大きな関係があります。
2.4GHzでは、障害物の多い場所でも接続しやすく、代わりに通信速度が速くないという特徴があります。一方、5GHzは障害物で電波が切断されることも少なくありませんが、通信が高速です。
周波数帯域 | 特徴 |
2.4GHz | 障害物に強く、通信速度は高くない |
5GHz | 障害物に弱く、通信速度は低い |
つまり、それぞれの帯域の特徴やメリットを兼ね備えているのがWiFi6です。ただし、端末が5GHzと2.4GHzのどちらか1つだけに対応(海外の端末など)する場合、WiFi6による両対応のメリットは得られません。
ホテルは宿泊客の利用を前提としてWiFiを提供するため、通信環境が快適で2つの帯域(5GHz・2.4GHz)をカバーするWiFi6のルーターを採用することがおすすめです。
その上で、WiFi接続後の光回線(有線回線)につながる事が重要です。これらを踏まえて、以下にルーターやプロバイダ選びのチェックポイントを解説します。
ホテルが本格的なWiFi環境の構築をする場合に気になるのが予算面です。
WiFiをホテル施設に設置する場合は、WiMAXなどの無線通信端末を除いて、有線による設置工事が不可欠です。
すでにインターネット回線の契約がある場合は、客室用WiFiを設置する切り換えの調査や工事も必要となります。
そのため、「調査費用は無料になるか?」「総額はいくらになるか?」などの疑問を解消し、工事費用の見積もりを比較することが大事です。
さらに、月額料金や端末・ルーターの代金など、初期費用やランニングコストを計算する必要があります。
もちろん、工事(費)無しで使えるWiMAXは、貸し出しによる通信環境の提供が行なえます。しかし、客室数の多いホテルでは、端末の事前準備が多く必要で、費用負担が計り知れません。したがって、端末貸し出しによる対応は小規模なビジネスホテルなどに限られます。
ホテルWiFiのルーターを選ぶときは費用に目が行きがちです。しかし、WiFi6のように通信技術面や客室対応のAP(アクセスポイント)の複数設置などもチェックすることが欠かせません。
例えば、有線ならWiFiとしてAPを構築(ルーター設置)し、WiMAXなどの無線通信なら1台ずつ専用の貸し出しルーターを用意するなどです。
ホテルは構造上、複雑な作りになっていて、部屋と壁が交互に複数存在します。そのため、一箇所にAPを設置しても、ホテル内全体に電波が届かないため、APを客室や共用部にそれぞれ設置することになります。
APの数を減らす場合は、障害物に強い2.4GHz対応のルーターを選びます。両方対応しているのが好ましいですが、そうでない場合は2.4GHzを優先することです。
Bluetoothとの干渉が起きやすいポイントには注意が必要ですが、予算などを抑えやすく、ホテルへの導入には向いてます。
プロバイダは、設置業者に依頼するときにホテル側で先に回線契約が必要になるケースがあります。APにルーターを設置しても元になるインターネット回線が契約されていなければ、ネットには繋がりません。
そこで、ホテル内の回線工事をする前に、プラバイダ契約の有無を確認し、必要に応じて選定する必要があります。プロバイダは基本的に光回線を提供する「NTT」(西・東)と「KDDI」のみで、上記いずれかの回線を利用してプロバイダはサービスを提供しています。
「~光」「~ひかり」といった名前のプロバイダが多数あっても、回線自体は1つで基本的に変わりません。そのため、プロバイダの独自サービスを比較して決めるのがおすすめです。
ただし、通信速度やプランによるデータ量制限など、混雑具合や契約内容で同じ回線でも違いが出ることはあります。
WiFiを設置するとき、「調査費用は無料になるか?」や「工事費用の見積もり額はいくらか?」を最初に確認することです。
しかし、費用だけで業者を選ぶのはリスクがあります。なぜなら、費用が安いために、目に見えない場所で手抜きや設置基準に満たない工事が行われることもあるからです。安すぎる業者には注意して工費を比較することが重要です。
また、評判や口コミ、サービス内容も比べます。一見、同じような工事内容でも、細部が他社と異なっていたり、工事が完成した後にサポートの有無や口コミ上で問題が起きていないかも確認することです。
加えて、ホテル側はセキュリティの知識がなく、対策を十分に取れない場合も少なくありません。そこで、セキュリティのアドバイスや保守面をサポートしてくれる業者も有用です。
例えばセキュリティ不安として、共用部のフリーWiFiや客室のWiFiは、パスワードや監視のセキュリティを十分にしていないことが多く、宿泊客にはあまり信用されていません。
ビジネス向けの宿泊客をWiFiネット環境ありで呼び込む際は、セキュリティにも注意した選び方がおすすめです。
ホテルがWiFiの設置工事を完了して、宿泊客に提供するまでには、次のような流れでプロバイダの検討や業者手配が必要になります。
最初に工事を依頼する業者を決めます。ホテルにWiFiの設置工事ができる業者は限られるため、その中から良さそうな業者を選びます。
依頼後にすぐ工事が始まるわけではなく、相談(ヒアリング)を経て、まずはホテルの状況やAPの箇所を確認する調査がスタートします。
調査が必要な理由としては、電波が届く状況や配線工事の下見で確認を行うためです。
ただし、ホテルの場合、サイトサーベイのような精密な測定や図面化の細部検討は通常行われず、簡単な調査のみとなります。
業者がプロバイダ契約を事前に必要とする場合は、先に回線とプロバイダ契約、ルーターの用意を行います。
特にルーターは、業者がメーカーを指定する場合はホテル側の希望と合わないこともあるため、自社で自由に選定できることが大事です。必要な機材等は業者側が予算に応じて用意してくれます。
本格的に業者への依頼が決まったら、契約を交わした上で工事日程・期間の確認をします。契約がどの段階で行われるかは業者にもよります。
また、工事が開始されることが決まったら、スケジュールを確認して、ホテルの営業にどのくらいの影響が出るかもチェックしましょう。
完了のタイミングによっては、いつからの宿泊客が「WiFiを使える宿泊プラン」として提供できるか時期が変わるためです。
WiFiは業者によって工事の規模も変わってきます。TVケーブルや既存の配線を利用して短期間に終わり、工事の手間がほとんどないケースもあるためです。
特にAPが多い場合は設置箇所も多くなり、ホテルが大規模なほど配線工事の距離も長くなります。
工事が完了したら機器の設定や動作の確認を行い、サポート体制のしっかりしたところでは事前のレクチャー(講習や解説など)が行われます。
工事が終わって、レクチャーによる従業員の指導が完了したら、宿泊客にWiFiサービス込みのプランを提供します。
ID・パスワードの提供や確認作業など、フロントに必要な業務を追加しましょう。
今回は、ホテルが宿泊客向けのWiFiを導入すべき理由やWiFi業者に依頼する流れなどについて解説しました。
インバウンドが増える宿泊業の代表格であるホテル事業者は、時代の流れに乗り遅れないようにWiFiサービスを提供したいところです。
しかし、設置依頼する業者や機材はどれでも良いわけではなく、機器の周波数帯域やルーター選び、費用、工期などを考慮して比較検討しましょう。